業務システム開発の流れを完全解説|工程・業務フロー・成功のポイントを徹底ガイド
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業務システム開発は、企業の業務を効率化し、生産性や正確性を高めるための重要なプロジェクトです。本記事では「計画 → 要件定義 → 設計 → 開発 → テスト → 運用保守」という開発プロセスの全体像を整理し、各フェーズの目的・成果物・注意点を体系的に解説しています。
業務システム開発とは?基本概念と目的
業務システム開発プロジェクトを成功させるためには、まずその定義と目的を正確に理解することが不可欠です。本セクションでは、業務システムの基本的な概念と、開発が企業にもたらす価値について解説します。
業務システムの定義と種類(販売・在庫・生産・会計など)
業務システムとは、企業の特定の業務を効率化・自動化するために設計された情報システムを指します。従来のアナログな作業(紙の伝票、手計算、Excel管理など)をデジタル化し、業務の標準化、迅速化、正確性の向上を実現します。
業務システムは、その目的によって大きく二つのカテゴリに分類されます。
1. 基幹系システム(SoR: Systems of Record)
企業の根幹となる業務データを正確に記録・処理するためのシステムです。信頼性や堅牢性が最重要視されます。
販売管理システム: 見積、受注、出荷、売上、請求、入金までの一連の販売プロセスを管理します。
在庫管理システム: 商品や部材の入出庫を管理し、適正な在庫数を維持します。
生産管理システム: 製造業において、生産計画、工程管理、品質管理などを担います。
会計システム: 財務会計(決算書作成)や管理会計(経営分析)に必要なデータを処理します。
人事給与システム: 従業員情報、勤怠、給与計算、社会保険などを管理します。
2. 情報系システム(SoE: Systems of Engagement)
データの活用やコミュニケーションの円滑化を目的とし、基幹系システムで蓄積されたデータを分析したり、社内外との連携を強化したりします。
CRM(顧客関係管理): 顧客情報や商談履歴を一元管理し、営業活動やマーケティングを支援します。
SFA(営業支援システム): 営業担当者の行動管理や案件の進捗を可視化します。
グループウェア: メーラー、スケジュール管理、社内SNSなど、情報共有とコミュニケーションを促進します。
これらのシステムを適切に導入・連携させることが、組織全体の生産性向上につながります。
開発の目的と企業にもたらす価値
業務システムを開発する目的は、単に「システムを導入すること」ではありません。その先にある経営課題の解決こそが本質的な目的です。主な目的と、それによって企業にもたらされる価値は以下の通りです。
業務効率化と生産性向上:
定型的な作業や反復業務を自動化することで、作業時間を大幅に短縮します。これにより、従業員はより付加価値の高い、創造的な業務にリソースを集中させることができます。
属人化の解消と業務標準化:
特定の担当者しか知らないノウハウや手順(属人化)は、その担当者の不在時に業務が停滞するリスクを抱えています。業務システムは、定められたルール(業務フロー)に基づいた処理を徹底させるため、誰が担当しても一定の品質を担保できるようになり、業務が標準化されます。
データの一元管理と迅速な経営判断:
部署ごと、担当者ごとにExcelなどでバラバラに管理されていた情報がシステムに一元化されます。これにより、「最新の正しいデータ」がリアルタイムで可視化され、経営層は正確な情報に基づいた迅速な意思決定(データドリブン経営)が可能になります。
ヒューマンエラーの削減とコンプライアンス強化:
手入力によるミスや確認漏れといったヒューマンエラーは、システムによる自動計算やアラート機能によって大幅に削減されます。また、操作ログの記録や権限設定により、不正防止や内部統制の強化(コンプライアンス対応)にも寄与します。
自社開発・外注・パッケージの違い
業務システムの導入方法には、大きく分けて「自社開発(内製)」「外注(スクラッチ開発)」「パッケージ導入」の3つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、自社の状況(予算、期間、必要な機能、IT人材の有無)に応じて最適な手法を選択する必要があります。
| 開発手法 | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 自社開発(内製) | 社内のエンジニアが独自にシステムを設計・開発する。 | ・業務への適合度が非常に高い・仕様変更に柔軟かつ迅速に対応可能・開発ノウハウが社内に蓄積される | ・高度な技術力を持つIT人材が必要・開発・保守リソースを自社で賄う必要がある・開発期間が長期化しやすい |
| 外注(スクラッチ開発) | 開発会社(ベンダー)に依頼し、ゼロからオーダーメイドで開発する。 | ・業務への適合度が高い・自社のリソースを開発に割かなくてよい・専門的な技術や知見を活用できる | ・コストが最も高額になりやすい・開発期間が長期化しやすい・ベンダー選定と要件定義が重要 |
| パッケージ導入 | 既に完成している既製品のソフトウェアを導入し、必要に応じて設定変更や一部カスタマイズを行う。 | ・開発期間が最も短い・コストを比較的安価に抑えられる・業界の標準的な業務フローが組み込まれている | ・自社の特殊な業務フローに合わない場合がある・機能のカスタマイズに限界がある・パッケージの保守・運用ルールに縛られる |
近年では、これらの中間的な手法として、特定の業務領域に特化した「SaaS(Software as a Service)」を利用するケースや、基本的な機能はパッケージで賄い、不足する機能のみをスクラッチ開発する「ハイブリッド型」も増えています。
業務システム開発の全体フロー
業務システム開発は、一般的に「ウォーターフォールモデル」と呼ばれる、上流工程から下流工程へと順に進める開発手法が採用されるケースが多く見られます。これは、各工程の完了を明確に定義し、手戻りを防ぎながら着実にプロジェクトを進める手法です。
全体像は「①計画 → ②要件定義 → ③設計 → ④開発(実装) → ⑤テスト → ⑥運用・保守」という流れで進行します。以下で、各フェーズの概要を解説します。
計画・要件定義フェーズの目的
プロジェクトの成否を分ける最も重要なフェーズです。
計画フェーズ:
「なぜシステムを開発するのか」という目的を明確にします。経営課題や現場の業務課題を洗い出し、システム化によって解決したいゴールを設定します。同時に、プロジェクトの体制(責任者、担当者)、大まかなスケジュール、予算(RFP:提案依頼書を作成する場合はこの段階)を決定します。
要件定義フェーズ:
計画フェーズで定めたゴールに基づき、「何を(What)」システムで実現するのかを具体的に定義します。発注側(ユーザー)が実現したい機能要件(例:ボタンを押したら請求書がPDFで出力される)と、性能やセキュリティなどの非機能要件(例:応答速度は3秒以内、不正アクセスを遮断する)を開発会社(ベンダー)とすり合わせ、合意形成を行います。
このフェーズでの「曖昧さ」は、後の設計・開発フェーズでの認識齟齬や手戻りを生む最大の原因となります。
設計・開発フェーズの進め方
要件定義で決定した「何を」に基づき、「どのように(How)」作るかを具体化するフェーズです。
設計フェーズ:
システムの「設計図」を作成する工程です。
1. 外部設計(基本設計): ユーザーから見える部分(画面のレイアウト、帳票の形式、操作方法など)を設計します。発注側は、この設計書を見て、要件定義で求めたものが実現されているかを厳密に確認します。
2. 内部設計(詳細設計): 開発者が見る部分(プログラム内部の処理ロジック、データベースの構造、モジュール間の連携方法など)を設計します。
開発(実装)フェーズ:
設計書に基づき、プログラマーが実際にプログラミングコードを記述していく工程です。
テスト・運用保守フェーズの重要ポイント
開発したシステムが要件通りに、かつ問題なく動作するかを検証し、リリース後の安定稼働を支えるフェーズです。
テストフェーズ:
1. 単体テスト: プログラムの最小単位(モジュール)ごとに行うテスト。
2. 結合テスト: モジュール同士を連携させた際に行うテスト。
3. 総合テスト(システムテスト): システム全体として要件定義を満たしているか、性能や負荷に耐えられるかなどを検証するテスト。
4. 受入テスト: 最終的に発注側(ユーザー)が実際の業務を想定して操作し、要求した仕様通りに動作するかを検証するテスト。
運用・保守フェーズ:
テストをクリアしたシステムを本番環境にリリース(移行)し、実業務での利用を開始します。リリース後も、システムの安定稼働を監視し、障害発生時の対応、OSやミドルウェアのアップデート、ユーザーからの問い合わせ対応、小規模な機能改善など(保守)を行います。
各フェーズでの成果物と担当範囲
各フェーズでは、後の工程のインプットとなる「成果物」が作成されます。これらは、プロジェクトの進行と品質を担保する上で極めて重要です。
進行管理とコミュニケーションの基本
大規模なプロジェクトになるほど、関係者(発注側の経営層、現場担当者、開発側のPM、エンジニアなど)が増え、コミュニケーションは複雑化します。プロジェクトを円滑に進めるためには、体系的な進行管理が不可欠です。
WBS(Work Breakdown Structure): プロジェクトの全作業を細かく洗い出し、階層構造で管理する手法。
ガントチャート: WBSで洗い出したタスクを時系列に並べ、スケジュールと進捗を可視化する図。
定例会議: 発注側と開発側が定期的に集まり、進捗の確認、課題の共有、意思決定を行う場。
課題管理表: 発生した課題(仕様の確認、遅延、不具合など)を一覧化し、担当者、期限、ステータスを管理する表。
これらのツールや場を活用し、「報告・連絡・相談」を密に行うことが、認識のズレを防ぎ、プロジェクトを成功に導きます。
工程ごとの具体的な業務フローと成果物
前章ではシステム開発の全体フローを概観しましたが、本章では、プロジェクトの品質を大きく左右する「成果物の関係性」と、開発を円滑に進めるための「プロジェクト管理(QCD)」について解説します。
要件定義書・設計書・テスト仕様書の関係
業務システム開発において、「要件定義書」「設計書」「テスト仕様書」は三位一体の重要なドキュメントです。これらは互いに密接に連動しており、この連動性(トレーサビリティ:追跡可能性)が品質を担保します。
1. 要件定義書(何を実現するのか):
「ユーザーがシステムで実現したいこと」が記述されています。
(例:顧客データをCSVファイルで一括登録できること)
2. 設計書(どう作るのか):
要件定義書の「何を」を実現するために、「どのように」作るかを記述します。
(例:[外部設計] 画面上部に「CSVアップロード」ボタンを配置する。 [内部設計] アップロードされたCSVをサーバーの特定フォルダに格納し、バリデーション処理を実行する)
3. テスト仕様書(どう確認するのか):
設計書に基づき、「正しく作られたか」を確認する方法を記述します。
(例:[テスト項目] 1. 正常なCSVをアップロードし、データが登録されることを確認する。 2. 形式が不正なCSVをアップロードし、エラーメッセージが表示されることを確認する)
要件定義書に書かれていない機能が設計書に盛り込まれたり、設計書と異なる内容がテストされたりすると、プロジェクトは破綻します。「要件定義→設計→テスト」という一連の流れが、すべて一貫した論理で結ばれていることが不可欠です。
プロジェクトマネジメントと進捗管理
プロジェクトを成功に導くためには、プロジェクトマネージャー(PM)による強力なマネジメントが求められます。PMの役割は、プロジェクトの「QCD」を管理・最適化することです。
Q (Quality: 品質):
要件定義書で定められた品質(機能、性能、セキュリティ)を満たしているかを管理します。設計レビューやテストを徹底し、不具合の発生を最小限に抑えます。
C (Cost: コスト):
定められた予算内でプロジェクトを完遂できるよう管理します。リソース(人員)の配分や、追加要件によるコスト増(見積もり)を適切に管理します。
D (Delivery: 納期):
設定されたスケジュール(納期)を守るため、進捗を管理します。前述のガントチャートなどを用いて進捗を可視化し、遅延が発生した場合は、リソースの追加投入やスケジュールの見直し(リスケジュール)を迅速に判断します。
QCDは相互に影響し合うため、PMは常に最適なバランスを取りながら意思決定を行う必要があります。また、予期せぬトラブルに備えるリスク管理や、仕様変更を正しく扱う変更管理もプロジェクトマネジメントにおける重要な業務です。
成功する業務システム開発のポイント
業務システム開発は、技術的な側面だけでなく、関係者間の調整や合意形成といった「人的」な側面が成功を大きく左右します。最後に、プロジェクトを成功に導くための最も重要なポイントを解説します。
要件の明確化と関係者の合意形成
業務システム開発の失敗原因として最も多いのが「要件定義の失敗」です。これは、発注側と開発側の認識のズレから生じます。
「As-Is(現状)」と「To-Be(あるべき姿)」の明確化:
システム開発は、単に現状の業務をそのままシステムに置き換える(As-Is)だけでは不十分です。非効率な業務フローまでシステム化してしまっては、投資対効果は得られません。「システム導入を機に、業務フロー自体を見直す(To-Be)」という視点が不可欠です。
現場担当者の巻き込み:
システムを実際に利用するのは現場の担当者です。情報システム部門や経営層だけで要件を決めてしまうと、現場の実態と乖離した「使われないシステム」が完成してしまいます。開発の初期段階から現場のキーパーソンをプロジェクトに巻き込み、詳細なヒアリングを行うことが極めて重要です。
関係者全員の合意:
経営層が求める「コスト削減」と、現場が求める「操作の簡便性」が相反する場合もあります。プロジェクトの目的(何のためにこのシステムを導入するのか)に立ち返り、関係者全員が納得するまで議論を尽くし、「何を実現し、何を(今回は)諦めるのか」というスコープを明確に合意形成することが成功の鍵となります。
ベンダーとの適切なコミュニケーション設計
特に開発を外注する場合、開発会社(ベンダー)との関係構築がプロジェクトの品質を決定づけます。
「丸投げ」の禁止:
「専門家だから」とベンダーにすべてを任せてしまう「丸投げ」は、最も危険な行為です。発注側は、自社の業務を最も理解している当事者として、主体的にプロジェクトに関与し続ける必要があります。ベンダーは「開発のプロ」であっても、「発注元の業務のプロ」ではありません。
パートナーとしての関係構築:
ベンダーを単なる「下請け」ではなく、「プロジェクト成功のためのパートナー」として扱う意識が重要です。対等な立場で課題を共有し、共に解決策を模索する関係性を築くことで、ベンダー側も最大限のパフォーマンスを発揮しやすくなります。
仕様変更ルールの明確化:
プロジェクト進行中の仕様変更は、コストの増大と納期の遅延を招く最大の要因です。変更要望を出す際の正式なルート(誰の承認を得るか)、変更に伴う影響(追加コスト・期間)の見積もりプロセスなど、仕様変更に関するルールをプロジェクト開始前に双方で厳密に定めておく必要があります。
業務システム開発は、単なるIT導入プロジェクトではなく、「企業の業務フローを再設計する改革プロジェクト」です。全体像を正しく理解し、特に上流工程である計画・要件定義、そして関係者間の密なコミュニケーションを徹底することが、成功への唯一の道筋と言えるでしょう。
業務系システム開発に必要なソフトスキル
クライアントとの折衝力とコミュニケーション力
業務系システム開発では、クライアントと円滑な関係を築き、正確にニーズを把握する折衝力が求められます。特に、クライアントの要望を的確に理解し、実現可能な形で反映することが重要です。
また、クライアントがITに詳しくない場合には、専門用語を避けながらコミュニケーションを取る力が求められます。また、プロジェクトを円滑に進めるためには、開発者同士でのコミュニケーションも重要です。
ヒアリング力と調整力
クライアントの希望や要求を正確に聞き取るヒアリング力と、システム開発のプロセスで生じる調整事項をスムーズに解決する調整力が重要です。
多方面にわたる知識
技術的な知識だけでなく、クライアントの業界に関する知識も重要です。クライアントの業界や業務内容を理解することで、課題を発見し、最適なシステムを設計・開発できます。
また、業務系システムに関する情報収集も行うことで、最適な提案が可能です。そのため、業務系システム開発には多方面にわたる知識が必要だといえます。
論理的思考力
論理的思考力は、クライアントの要望を理解し、それを具体的な解決策につなげるために必要なスキルです。クライアントからの情報を整理し、本質的な課題を見極め、最適な解決策を提案する思考プロセスを構築することが求められます。加えて、解決策をクライアントに提示する際は、根拠を明確に説明できる能力も重要です。
まとめ
本記事で解説した開発フローや成功のポイントが、貴社のプロジェクト推進の一助となれば幸いです。もし、自社の業務システム開発の進め方や、要件定義の具体的な手法、適切なベンダー選定に関して専門的なアドバイスが必要な場合は、豊富な開発実績を持つ弊社へお気軽にご相談ください。
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